1月22日から完全に寝たきりの状態になったふぅ。
倒れた日からほぼ3ヶ月が過ぎていた。
食事はいつもの様に食べる。
ドライフードと妻特製の肉や魚と野菜の水煮をトッピング。
排泄はやはりその場ではしたがらず、
妻と抱えて庭に連れ出すが中々上手く行かなかった。
こちらがそろそろかな、と連れ出すのは諦め、
ペットシートを敷いてしてくれるのを待った。
明け方クウンと鳴けばその合図。
してくれたら、騒がず、ご褒美をあげる。
大好きなパン。
これで覚えてくれたが、やはり出来るだけしたくないらしい。
1日1回から2回の排尿、1日1回の排便となってきた。
寝たきりになったが、3ヶ月前の経験があるので、夫婦は慌てなかったし、動揺も少なかった。
仕事にも毎日行った。
朝食事や排泄の処理を妻は良くしてくれたし、
午後は俺が帰宅し世話をした。
いつものようにふぅに話しかけ、寝返りを打たせ、
撫でたり、おやつをあげたり。
妻がふぅの大好きな芋あん鯛焼きをお土産に。この後放屁連発!1月24日
1月26日の日記にはこう記していた。
ふぅが倒れて3ヶ月。この1週間で急激に衰え、遂に日曜日から全く立てなくなった。寝たままの排泄を嫌がっていたが、食べるは飲むはなので、否が応でも出る物は出る。ペットシートに排泄すれば騒ぐのではなく、ご褒美をあげる。これで随分スムーズにしてくれるようになった。3ヶ月前の寝たきりを経験しているので、無言のふぅが何を欲しているかも解る。夫婦共々家を空ける時も以前よりも心が楽だ。不在時にふぅが逝く時はその時。思えばこの3ヶ月、その時の為の準備の時間を未熟な夫婦の為にふぅはくれたのだろう。
今夜も隙あらば何か食べ物を欲しがり、食べ、寝息を立てている。モルヒネシートとステロイドで痛みは無さそうで、表情はいつも通り。気持ちと裏腹な不自由な身体とも折り合いをつけてきている。本当に適応力があり、ある意味ズル賢い(笑)日常の中で少しずつ。時のように少しずつ。未来と過去が交差する現在を愛おしく。
「この状態からはどのような最期になりますか?」
と俺は院長に尋ねていた。
「肺の音がかなり悪いです。心肺不全も在ると思います」
夫婦は少しづつ成長したのかもしれない。
寝たきりではあるが、ふぅが元気な頃の様に接し、
行ってきますと出掛け、ただいまと帰宅する。
ふぅが生きていて、ジャーキーをあげる。
3人で会話をする。
お休みとベッドに潜り、おはようと起きる。
ふぅがクゥンと鳴けば元気な方が起きて様子を見る。
人間がしてあげられることは少ない。
ふぅは今を受け入れている。
頑張っている訳ではなく、
受け入れている。
我々はそのふぅを受け入れているだけ。
1月が終わり、如月。
いつものように仕事の合間に帰宅し、
ふぅの世話して俺も食事。
最強寒波なるものが近づいてきた水曜日。
今朝は排尿がなかったので落ち着かなかったふぅ。
夕方ピーピーと鳴き、腰を少し浮かせて大量の排尿。
綺麗にしてあげると何とも良い顔だ。
排便は無かったが、落ち着いたらしく少しユラユラまどろみ始めた。
19時前に夕御飯をあげて俺は再び仕事に出る。
ジャーキーを上げて、すぐ帰ってくるよと声をかけた。
21時過ぎ妻と帰宅。
ただいま!おかえり!
寝床を整えてやると、排便。そして少しの排尿。
お利口さん!ご褒美のパンをあげる。
半分だけ食べて、残りは要らないと、
今迄で初めての拒絶。
枕を整えて楽にさせた。
妻はふぅを綺麗にしてやった。
それから呼吸が少し深く大きくなった。
眼の色が少し薄くなり、大きく見開いて視線は1点を見つめている。
大きく、ゆっくり、深い呼吸。
妻とふぅの名前呼びながら、身体を触る。
そして、呼吸はゆっくり、止まった。
その間3分から5分だった。
2012年2月1日21時45分。
ふぅは逝った。
排泄を全て済まし、最期に大好きなパンを食べ、
家族が揃った寒い夜に、、
完璧に迷惑をかけずに。。
妻は大きな声をあげて泣いた。
俺は有難うと泣いた。
実家に告げると酔った父が母とやってきた。
「寒い寒い、この風はふぅが吹かせてるんだね」
通夜だと酒を要求したので一緒に飲んだ。
南天を持って来ていたのでふぅに。
両親が帰り、明日の準備をしながら話す。
「ふぅは節分前に逝きたかったんだよ」
「明日の俺達のスケジュールを知ってたんだね」
そう、明日なら午後はふぅの為に使える。
「最後までお利口さんだったね」
1999年6月1日生まれのふぅ。キッチリ12歳と8ヶ月。
翌朝は雪。
ふぅの庭にも積もった。
午後帰宅し、ふぅを糸島へ。
良く糸島の海で遊んだので志摩町にあるペット霊園にした。
大好きなパンとジャーキーと妻の手紙
雪雲間の青空を登って行った。
1週間が過ぎ、院長にも改めて報告と御礼に行った。
悲しみは今となっては一瞬で、
楽しかった思い出で溢れている。
ふぅを喪った事は事実だが、得た物の方が圧倒的に多い。
ふぅと過ごせた日々は幸せだったし、出会えた事に感謝している。
別れの辛さは、再会する時の喜びに凌駕されるだろう。
「ふぅ、有難う。先に行ってて、またね」
最期に約束したんだ。
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